仕事用のスーツをカスタマイズ(改造)してみる
スーツの裏地問題
「総裏」」か、「背抜き」か。 サラリーマン、もしくは日常的にスーツを着用する職業の男性諸氏であれば、必ずブチ当たるであろう、この裏地問題。あなたは「総裏」派?
それとも、「背抜き」派?
私見を述べさせていただくならば、少なくとも、日本国内においてスーツの裏地は「背抜き」一択なのである。
ちなみに、これは私の完全なる独断と偏見であるので、違った意見をお持ちの諸氏にはご容赦いただきたい。
理由を述べよう。
「総裏」のスーツは「摩擦に強く長持ちする」だとか「質実剛健で見栄えがする」などとよく耳にするが、それはあくまで、乾燥性のカラッとした気候である欧米での話し。
温暖湿潤気候で湿度の高い日本では、とにかく「暑い」のである。
脂まみれのテカり顔と汗シミだらけのスーツでは、「見栄え」もクソもない。
たとえ冬場であっても、空調管理の行き届いた屋内や車内で過ごすことが大半をしめるサラリーマン、会社員にとっては、「総裏」のスーツはやはり暑いし、着用できるタイミングがあまりにも限定されてしまう。
宝の持ち腐れである。
それならば、最初から「背抜き」のものを購入すればよかろう、という話しだが、頂き物やお下がり品を常用している私のような貧乏人には、そうは問屋が卸さない。
そんな訳で今回は、手持ちのスーツの裏地を「総裏」から「背抜き」にリフォームし、カスタマイズすることに挑戦してみた。
とはいえ、裁縫に関してはド素人の私。
簡単なボタン付けなどならともかく、複雑な構造を持つスーツの改造手術などできるわけがない。
というわけで、プロの手を借りるべく、予算とのバランスを含め、3つの方法を検討してみた。
メーカー(ブランド)に持ち込む
まず、料金を度外視して最も確実に、かつ美しく仕上げることができそうなのが、そのスーツの生産元であるブランドのショップに持ち込むという方法である。私が今回、改造を企てているスーツのブランドは、ご存じの方も多いであろう、高級イタリアスーツの代名詞「ゼニア」。
正しくは、「Ermenegildo Zegna」(エルメネジルド・ゼニア)というらしいが、未だに憶えられない。
オーダーなどではなく、所謂、吊るしの既成スーツですら価格帯が30万円~50万円前後というキ●ガイっぷり、否、高級ブランド様である。
何故、私がこんな高級スーツを所有しているのかといえば、単純に、お世話になっている方からのお下がり品なのである。
シルエットも素材も色合いも最高なのだが、残念なことに裏地が「総裏」。
それでも我慢して今まで着用していたのだが、さすがにシビレを切らし、今回のリフォームに踏み切った。
早速、銀座の正規ショップに電話で問い合わせてみると、2万円ほどでやってくれるらしい。
煩雑なやり取りを予想していたが、あっさりと即答であった。
対応してくれた女性スタッフも、もっと高ビー(死語)なのかと思いきや、程よくフランクで話しやすい。
さすがは天下のゼニア様。
しかし、2万円とは…。
もう少し上乗せすれば、安いスーツが1着買えてしまう。
ジャケットだけであれば、それなりのものが買えてしまう値段ではないか。
リフォームショップを利用する
2万円という金額に恐れをなし、生産元メーカー(ブランド)に持ち込むという選択枝は、一先ず保留に。そこで次なる選択肢として登場するのが、庶民の心強い味方、所謂、街のリフォーム屋さんである。
郵送でのやり取りには、まったく抵抗がないのだが、遠方だと往復の送料がバカにならないので、徒歩圏内、自転車圏内の店舗を選択することに。
Googleマップを開き、「洋服 リフォーム」と検索。
3~4店舗ほどのリフォーム屋さんが検索された。
その中で最大手の某リフォームショップに問い合わせてみることに。
こちらのリフォームショップは、以前にも修理依頼したことがある系列店の親玉的存在。
全国に245店舗を展開し、有名百貨店とも契約がある、創業50年を誇る老舗。
系列店の方は、非常に仕事が丁寧で、信頼のおけるお店であった。
今回は、せっかくなので、その総本山である本店に仕事を依頼してみることにした。
ホームページにアクセスすると問い合せフォームがあったので、裏地を総裏から背抜きにリフォームしてほしい旨を記載し送信。
1~2日経つと返信があった。
提示された料金は、ゼニアのショップとほぼ同じ、2万2千円。
これまでの流れで、今回の改造にかかる費用の相場が2万円前後であるということが見えてきた。
リフォーム業界ほぼ最大手がこの料金設定であるということは、もっと小規模のローカル店を探せば、7~8割の料金を狙えるかもしれない。
しかし、もっとも肝心な仕上がりのクオリティが気になるところ。
地域密着型ローカル店を探す
そこで、私は最終的な選択枝として、「地域密着型の職人気質リフォームショップ」を探すことにした。ある程度遠方でも構わないが、往復の送料を加味した料金と、もっとも重要な仕事のクオリティのバランスのとれた店を狙わねばならない。
早速、ネットで検索。
何でもネット。
すごい時代になったものだ。
余談になるが、我々の青春時代には、カルチャー的な情報源といえば「ホットドッグ・プレス」くらいしかなかった。
マジで。
あとは、自分の足を使って模索するしかない。
それを「味わい深さ」と呼ぶべきか、「時間の無駄」とするべきなのか。
話しを本筋に戻そう。
やはり、地方の小規模店はリーズナブルである。
中には、単なる「洋服のお直し店」ではなく、キチンとしたテーラーなどもある。
料金は、前述で提示された料金の6~7割ほど。
しかし、往復にかかる送料や手間を差し引くとそこまでのお値打ち感はない。
決定打に欠けるのだ。
やがて、右往左往するうちに、埼玉県のさいたま市に面白い店を見つけた。
その名も「東京リフォーム」。
埼玉なのに。
侮るなかれ。
私の出身地である板橋区も明治の頃は埼玉県だったのだ。
もっと言えば、東京でさえ、江戸以前はただの湿原だった。
県境などそんなものであるという、店主の職人としての豪気が伝わってくるようではないか。
さっそく料金をチェック。
00 なんと7千円。
大手の半額以下である。
さすがに、仕事の方は大丈夫なのだろうかと疑いたくなり、ホームページをつぶさに閲覧してみると、どうやら創業25年の老舗らしい。
そして、お店のイメージタレントとして、ナゼか往年の細川ふみえの画像が貼り付けられている。
恐らく無断転載だろう。
ファンなのだろうか?
さらに、お店のキャッチコピーとして衝撃的なフレーズが目に飛び込んでくる。
「他店で断られた方、何処もやってくれないものが当店に持ち込まれます。」
というわけで、未だ着地点を得られず、我がスーツは元のままである。