ホームセラーで何年もワインを熟成させても大丈夫か?
熟成したワインの美味しさを一度でも経験してしまうと、ワイン好きはその美味しさの虜となり、買ったワインを自宅のセラーでも保管して、飲み頃まで待って飲みたくもなる。
でも、ワイナリーのカーブ等の熟成環境の整ったところなら未だしも、自宅のホームセラーで保管して健全に熟成するのだろうか?
数年寝かせてから開けたワインが期待外れなことが多く、セラートラブルがあったとは言え、上記の疑念が頭を掠めているところに、懇意のショップのオーナーが「殆どのセラーは冷気を出し過ぎていて、ワインを壊している」と仰って、微かな疑念が大きなものとなった。
そこで、自宅のセラーで7年以上保管した白ワイン(ブルゴーニュ特級クラス)を、未だ飲み頃ではないかもしれないが、複数本開けてみて、懇意のショップで10年以上保管したワイン(お店の本格的セラーで保管)と比べてみることにした。
ホームセラーで7年以上保管したワインの品質は?
上記の理由で、自宅のセラーで7年以上保管した白ワインとショップで10年以上保管したワインを比較してみた。
(銘柄は違うが、ほぼ同じクラスのワイン)
ショップで保管したワイン(ソゼのバタール・モンラッシェ2001)は素晴らしい状態で、香り・味わい共に傑出した出来栄え。
上品なリキュール香に、洋梨の果実香、カマンベールチーズの香りもある。味わいの余韻もかなり長い。
この時期のヴィンテージのブルゴーニュ白ワインは、PMO(これについては後述)が随分と問題視されていたが、このワインにはそんな兆候は微塵もない。
一方、自宅で保管したワイン(ポールペルノーのバタール・モンラッシェ2007とコントラフォンのPM一級シャンガン)は、高級シャルドネぽいねっとりした香りは感じられるものの全般的に閉じていて、妖艶さは感じられない。
味わいも、綺麗な酸や豊富なミネラルは感じられるのだが、滑らかさやコク・旨味ではソゼのバタールには及ばない。でも、ポールペルノーに関しては、翌日開いて良くなり、ソゼには及ばないものの複雑さが出てきた。
同じ銘柄、同じヴィンテージで比較していないので厳密には言えないが、味わいにはそれ程問題はなさそうであっても、香りの熟成が期待できなそうで、5年以内には飲んだ方が良さそうな気がする。
PMOとは?
PMOとは、熟成前酸化(プレマチュア・オキシデーションの略、プロジェクト・マネージメント・オフィスではない)のことで、ワインが正しく熟成しないで、飲み頃になる前に参加劣化してしまうこと。
特徴としては、不快なシェリー香が生まれたり、果実味が失われたり、色調も褐色がかった色になった状態のワイン。
1996年のブルゴーニュ白ワインに顕著で、1996~2000年頭のヴィンテージに集中してみられるようで、2000年以降に問題視され出し、ワイン通にはチョットした話題の種になった。
原因は、ハッキリ確定している訳ではないが、下記の要因等いくつかが考えられている。
- SO2の添加量が少なく、酸化を防止する為のSO2が足りなかったという話
- バトナージュが多く、必要以上に酸素を取り込み酸化させた疑い
- 質の悪いコルクやコルクの漂白に使われる過酸化水素の存在等
他にも、収穫が遅い(=酸度の低下)、過度のデブルバージュで澱が少ない(クリアな味わいのワインを目指すあまりワイン中の様々な成分の沈殿物である澱を取り除きすぎる)、N2窒素肥料が多い、等々の意見もあり、未だに全てが解明されていないのが現状である。
最近飲んだPMOのワイン
ピュリニィー・モンラッシェ村の名ドメーヌ「ルフレーブ」の醸造長を長年務めっていた実績もある、ピエール・モレ。
そのピエール・モレが自らの名前で造る「ムルソー レ・テソン 2012」。
期待を持って開けたところ、グランヴァン風の芳醇な香りも少しは感じられるものの、酸化劣化したシェリー香が強く感じられる。
味も、酸が尖っていて明らかに酸化したような味わいである。
香りに関しては、グラスに注ぎ立ては芳醇な香りも感じられるが、少し経つと酸化風味が強くなってくる。
味わいは、終始酸化した印象が強く、料理との相性でも酸化風味が邪魔してなかなかペアリングがとれない。
翌日は、グラスに注ぎ立てでも酸化臭のみで、更に悪くなっている感じである。
色調も10年以上経っているような濃い黄金色。
明らかに経過年数以上に酸化が進んでいると想われる。
ピエール・モレのワインは評価が高いのに、これは明らかにPMOでガッカリである。
2012の造りが失敗したのか、別ヴィンテージでもっと酒質の強そうなワインで再度確認したいと思う。
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