受け継がれる女王蜂の魂を見届けよ!
女王の孤独
「
196710noby」
このチャンネルの主人公は、セグロアシナガバチの女王たちである。
越冬した女王蜂が、たった一人で自分の巣作りをするところから動画は始まる。
女王蜂は自分の巣を作る場所を決め、コツコツと作業をし、卵を産みつけ、孵化を待つことになる。
時には集中豪雨で作り上げた巣を流され、時には吹き荒れる台風の風に巣を飛ばされ、時には己の力不足で巣を崩壊させ、それでも自分の子孫を残すため、ただただ無心に巣を大きくし続ける姿を見ると、涙が出てくるのである。
駆除すべき害虫のイメージが、このチャンネルを視聴することで払拭された人は多数いると私は思う。
女王の愛
孤独に巣を広げていた女王蜂に、やがて孵化した幼虫たちが餌を求めるようになる。
女王蜂の孤独が解消された後は、親子の深い愛情物語が繰り広げられてゆく。
幼虫たちは実に食欲旺盛であり、女王蜂の苦労は計り知れない。
甲斐甲斐しく幼虫に給餌をする姿に、思わず目が離せなくなってしまう。
幼虫たちが日に日に丸く肥えてゆく姿は実に愛おしく、育房の中でみっちりと埋まる姿を見て、思わず頬が緩んでしまうほどだ。
私は、確か虫が嫌いだったはずだ。
しかし、このチャンネルを見ているうちに、いつしか丸々とした幼虫たちの、美味しそうに肉団子を食べる様子が愛おしくてたまらないと感じるようになった。
女王蜂の深い愛情は、見るものの価値観をも変えてしまうほど、偉大なのである。
女王の敵
女王蜂の愛情をたっぷりと受けた幼虫たちは、さなぎになり、孵化をして、心強い働き蜂となる。
働き蜂は女王蜂の代わりに餌を狩りに行くようになり、一安心できるのかと思うのだが、残念ながらそうはいかない。
寄生蛾による、侵攻である。
育房の中に入り込み、女王蜂が大切に育ててきた幼虫を食い荒らし、命を奪う憎い寄生蛾。
さなぎになり、成虫として育房から出てきたというのに、その背には羽根がないものが何匹もいる。
寄生蛾の容赦ない攻撃をその身に受け、働き蜂としての機能を奪われてしまった悲劇のヒロインたちの物語を、このチャンネルでいくつも見てきた。
不具合を抱えることになってしまった働き蜂の生きざまを見て、何度涙をこぼした事だろうか。
命を落としてゆく蜂たちを見て、何度手を合わせた事だろうか。
女王の使命
頼れる娘たちと共に巣を大きくした女王蜂は、やがて卵を産むことだけに専念するようになる。
時代の女王を産み、オス蜂を産み、そして力尽きるのだ。
ともに巣を繁栄させた働き蜂たちも、女王と共に命を終え、一つの時代が幕を閉じるのである。
新女王蜂はオス蜂と交尾をし、冬を越し、新たな城を築くのだ。
脈々とつながれてゆく、セグロアシナガバチの種としての使命を目の当たりにし、果たして自分は今、これほどの使命感を持って生きることができているのだろうかと自問したくなるのである。
たかが蜂の物語、そういう人もいるかもしれない。
しかし、私は声を大にして言いたいのだ。
この「196710noby」というチャンネルに出会い、私は非常に満足しているという事を。
子を思う気持ちと子を見捨てる瞬間、生き抜こうともがく個体と生き抜けない個体を見限る仲間たちの姿は、今を生きる私の心に深く突き刺さったのだ。
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